IBDでは、栄養分の消化・吸収という働きをする消化管に慢性的に炎症が起こるため、栄養が摂りにくくなり、低栄養状態になりやすくなります。そのため、低栄養状態に対する食事療法が大切です。
IBD患者さんは、高いエネルギーが必要です
潰瘍性大腸炎やクローン病では、腹痛や悪心(おしん)、下痢などの消化器症状が起こります。消化器症状が強くなると食事や水分をとることが難しくなり、体内への水分・栄養の吸収量が低下し、低栄養状態になります1)。また、腸管の炎症によって栄養の吸収が妨げられたり、腸管からタンパクが漏れ出たりします。一方で、炎症や発熱によってエネルギー消費量が増え、潰瘍を治すにも高いエネルギーが必要となります。そのため、IBDでは栄養状態が悪くなることがあるのです1)。
こんな症状がみられたら?~症状からみる栄養素の欠乏
IBDでは下痢が多いことから、水分やナトリウム(塩分)が不足しやすくなります。ナトリウムが不足すると、倦怠感(けんたいかん)(体がだるくなること)や食欲不振、のどの渇き、塩気(しおけ)が欲しくなる、筋力が低下するといった症状がみられることがあります2)。また、その他に、ミネラルやビタミンといった栄養素も不足しやすくなることから、表1のような症状がみられることがあります。
表1 身体領域別の臨床所見と欠乏栄養素
IBD患者さんは、不足しやすい栄養素が比較的多く含まれる食べ物を積極的に食べて、十分に補給するようにしましょう(表2)。食品だけでなく、サプリメントを利用するのも良い方法です。
表2 IBDで不足しやすい栄養素が多く含まれるもの
消化管は栄養を吸収するだけでなく、免疫にも関係する大切な臓器です。症状の回復のためにも適切に栄養を摂るように心がけましょう。
次のコンテンツでは、実際にどのような食事療法を行えばよいのかについて、潰瘍性大腸炎とクローン病の場合に分けて解説します。
- 参考文献
1)日比紀文 監修、横山 薫ほか編集: チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト、羊土社、2016.
- 2)松本誉之、斎藤恵子ほか:潰瘍性大腸炎・クローン病の人の食事、女子栄養大学出版部、2008.
- 松岡 克善 先生
- 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授