納得できる自分なりの治療法をどう選ぶか?

「関節リウマチの症状と向き合うことはつらい」、そう思っていませんか?
積極的に症状に向き合い、主治医に自分の症状を伝えて一緒に考えることで、変わることがあるかもしれません。

納得できる自分なりの治療法をどう選ぶか?

KEYWORD SDM(shared decision making)
患者さんと医師が複数の治療について長所、短所を話し合いながら、最終的にどの治療を選ぶのか決定する方法。日本語では共有意思決定という。
例えば、
SDMが行われていないのは、今までメトトレキサート(一般名、MTX)を処方されていて、かなり痛みはとれたものの手が時折痛むことを主治医に訴えたら、それなら次は〇〇という生物学的製剤を処方するからね、と言われた場合。患者さんは自分の体のことやお金のことなどいろいろ質問したかったが躊躇して質問できず、〇〇の詳しい内容をわからないまま、主治医が勧めてきた〇〇に決定してしまう、このようなケースはSDMが行われていないといえる。
それに対して、SDMが行われている例としては、主治医から言われた〇〇という治療に患者さんが積極的にいろいろな質問をして、主治医もそれに対してきちんと答えて、最終的に治療内容に患者が理解して決定することをいう。

自分の症状を主治医に話すことは難しいですが、それをクリアできたら、次は何が必要でしょうか? 次のステップは、治療について主治医としっかりコミュニケーションできるようになることです。

病気の治療を選ぶ時には、例えば「先生にお任せします」から「自分で決めます」まで、いろいろな方法があります1)。インフォームドコンセントのように、主治医が説明した適切な治療法について、患者さんが納得して受け入れるのもよくあることです。最近では、従来のように主治医の勧める治療を受け入れるのではなく、患者さんと主治医のお互いが協力して話し合った上で、どのような治療を選ぶかを決めるSDMの考え方が注目されています。

関節リウマチの治療を選ぶ時にも、SDMの考え方は大切です。なぜなら、現在の関節リウマチ治療では、治療の開始や中止の時期、手術、リハビリテーションを受けるかどうか、また薬物治療を受けるなら抗リウマチ薬や生物学的製剤も含めて何を選ぶかなど、選べる治療が多いぶん、どんな治療を受けるのかを選ばないといけない場面も多いからです。

SDMによる患者さんと医師のコミュニケーションが治療に良い影響を及ぼす

また、関節リウマチ患者さんはこの病気と長く付き合うことになります。ですから最初に関節リウマチの治療を選べばそれで終わりではなく、時間が経って関節リウマチの症状が変化した時、新しい治療法が選べるようになった時、関節リウマチ以外の健康状態が変化した時、または経済的な状況が変化した時などに、治療を選び直す機会がやってきます。

1)青木昭子ほか:日本プライマリ・ケア連合学会誌2011;34(1):24

SDMによって治療に良い影響がある可能性があります

SDMで治療を選ぶと、あなたが希望する治療を選べること以外に何か良いことがあるのでしょうか? 実は、SDMで治療を選ぶと治療に良い影響があることが、関節リウマチでの研究ではありませんが、がんや糖尿病、精神疾患などの治療で行われたSDMについての研究で報告されています1)。この研究からは、SDMを通して患者さんと主治医とのコミュニケーションが深まり、下の図にあるように、患者さんの「病気・治療への感情/認識」、「普段の行動」、「健康状態」のそれぞれが直接的、あるいは間接的に改善して、結果的に良い影響があることがわかっています1)

SDMによる患者さんと医師のコミュニケーションが治療に良い影響を及ぼす

SDMによって治療に良い影響があることは、SDMによる治療の効果について、「患者さん」、「治療の観察者」、または「医師と患者さんの共同」で評価した結果をまとめた研究でわかりました1)。SDMによって治療効果が「改善した」という評価の割合は43%だったのに対して、「悪化した」という評価の割合は3%でした。さらに患者さんによる評価だけを調べると、「改善した」は52%で、より高い割合になりました。

SDMによる治療効果の変化
(患者さん、治療の観察者、医師/患者さん共同による97の評価の結果)

SDMによる治療効果の変化
(患者さんによる75の評価の結果)

さらに、治療効果を「病気・治療への感情/認識」、「普段の行動」、「健康状態」について分けて調べても、患者さんによる「改善した」評価の割合は、「悪化した」評価の割合に比べてすべて高かったのです。

DMによる治療効果の変化の内訳
(患者さんによる75の評価の結果)

あなたの治療を決める時にSDMを行うことで、関節リウマチという病気に対する感情や理解の深さの変化や、積極的に治療に参加できるようになるなど、治療に関するさまざまなことを改善でき、関節リウマチの治療に良い影響があるかもしれませんね。

1)Shay LA, et al.: Med Decis Making. 2015;35(1):114

SDMではどんな治療を選んだらいいの?

関節リウマチの治療をSDMで選ぶ時に、まず主治医がすることは、専門知識に基づいて関節リウマチの治療選択肢すべてを患者さんに伝えることです。また、患者さんの病歴と検査結果から、医学的に適切な選択肢を伝えます。これに対して患者さんは、関節リウマチや治療が自分の人生にとってどのような体験なのか、自分はどのような治療を受けたいかを主治医に伝えます。このように互いの情報を共有した上で、意思決定に向けて互いに話し合います。

関節リウマチの治療決定に関係する要素

SDMの結果、患者さんが選ぶのが医学的に最良の選択肢か、人生のために最高の選択肢かは人それぞれですが、SDMを進めていくうちに、主治医との話し合いの中で一緒に問題に向き合う関係が作られ、お互いの考え方を理解することができます。最終的には、あなたにとって最良の治療が選べたと納得できるでしょう。

田中 良哉 先生
田中 良哉 先生
産業医科大学 医学部 第一内科学講座 教授