その1本、減らしてみませんか?―より快適な毎日のために

乾癬患者さんにとって、禁煙することは、乾癬の治療の面だけでなく、健康管理の上でも重要視されています。

禁煙により期待できる効果とは?

広く知られている通り、禁煙には健康的なメリットが数多くあります。
一般的に、禁煙をすると、比較的早いうちにせき・たんなどの呼吸器症状の改善が期待できます。禁煙により呼吸器機能が改善すると、体内に侵入しようとする病原菌を退治する(追い出す)力が改善するため、インフルエンザなどの呼吸器感染症にかかるリスクも低下します。
また、禁煙を年単位で続けることで、肺機能の改善がみられたり、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)や脳梗塞、肺がんのリスクが低下したりすることもわかっています。禁煙を10~15年続けると、様々な病気にかかるリスクが非喫煙者のレベルまで近づくことも知られており、長期的な禁煙は重要です。
日常生活では、禁煙によって顔色や胃の調子がよくなるといった効果も期待できるでしょう。
乾癬患者さんでは、喫煙は症状の悪化や治療成績にも影響しますから、禁煙することはより一層大切です。

禁煙するためのサポートを活用しましょう

長い間タバコを吸い続けてきた人の中には、「ひとりで禁煙をするのがつらい」と感じる人もいるかもしれません。
禁煙をしたいけれどもやり切る自信がない、ひとりで禁煙にチャレンジしても成功したためしがないというような場合には、専門の医療機関で「禁煙治療」を活用するのもよい方法です。禁煙治療では、医師が貼り薬や飲み薬を処方し、禁煙をサポートしてくれます。

日本では、喫煙を単なる「習慣」ではなく、依存症としての「疾患」ととらえるという考え方の下、2006年4月より、一定の基準を満たす方への12週間に5回の禁煙治療に対して、健康保険が適用されるようになりました(図)。
12週間の禁煙治療でかかる費用は、その期間にタバコを吸っていた場合のタバコ代よりも安くすむことが多いです。また、禁煙に成功すれば、喫煙が招く将来的な病気のリスクを回避でき、その治療費を抑えることにもつながります。
乾癬の治療を続けながら禁煙治療を活用したい場合は、乾癬の主治医に遠慮せず相談してみましょう。

図:禁煙治療を受けられる方の基準

図:喫煙期間および喫煙量と乾癬発症リスクの関係

タバコ以外の方法で、楽しく気分転換を

禁煙のために、タバコ以外にも気分転換ができる方法を探してみるのもよいかもしれません。
例えば、スポーツで汗を流したり、熱中できるような趣味をみつけたりするのもひとつの方法です。また、ガムを噛みながらお気に入りの公園を散歩したり、コーヒーや紅茶を楽しんだりするなどして、リラックスできる時間をつくるのもよいでしょう。

日頃から、なるべくストレスをためないように工夫をすることも大切です。禁煙は乾癬の治療だけでなく、日常生活にも多くのメリットをもたらす活動としてポジティブにとらえるよう心がけましょう。

参考文献

  • 1)厚生労働省. e-ヘルスネット 喫煙.
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco(2018年11月27日アクセス)
遠藤幸紀 先生
遠藤幸紀 先生
東京慈恵会医科大学 皮膚科