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寛解とは? (1)症状をなくして病気の進行を抑える

2023/02/15?Knowledge

タイトル
寛解とは? (1)症状をなくして病気の進行を抑える
検証状況
Work In Progress
URL 名
RA-doctor3-2
概要
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内容
  • まずは、関節リウマチの症状がない状態を目指しましょう
  • 治療ゴールには個人差があり、数値だけにこだわらないことが大切です
  • 症状の消失だけでなく、病気の進行を抑えて発症前の生活を取り戻すことを目標に治療に取り組みましょう

治療ゴールを目指してなるべく早期に治療開始かつ治療ゴール達成を

私が考える関節リウマチの治療ゴールは、患者さんが発症前の生活を全て取り戻すこと、関節リウマチを考えなくてもいい生活を取り戻すことだと考えています。病気の進行には個人差がありますが、発症後早期に治療を開始したほうが、治療効果が出やすいことがわかっています1)
発症前の生活を取り戻すには、関節リウマチの症状を早期に消失させ、病気の進行を止める必要があります。この状態を「寛解」と呼びます。寛解には「臨床的寛解」「構造的寛解」「機能的寛解」の3つがあり、治療ゴールを達成するには、適切な治療で3つの寛解に導き、寛解の状態を長期間維持していくことが大切です2,3)

3つの寛解のうち、最初のゴールとなるのが臨床的寛解です。臨床的寛解とは、関節の痛みや腫れなどの症状がない状態のことを指します4)。臨床的寛解は、SDAI、CDAI、DAS28など、病気の勢い(疾患活動性)を測る複数の指標を用いて評価されます4)。SDAIなら3.3以下、CDAIなら2.8以下など、評価方法ごとに臨床的寛解の基準が数値で決められていて、これらの基準をクリアしていれば臨床的寛解を達成できたと判断されます4)。また、疾患活動性評価の数値が下がっていれば今の治療で効果がある、逆に上がっていれば効果が低いと判断され治療を見直すなど、治療の効果を見極めるためにも使われます。

数値にこだわり過ぎず、一人ひとりの病状にあった目標設定が大切

臨床的寛解の基準や疾患活動性の評価は具体的な数値で表されるため、数値がよくなれば励みになり、治療継続のモチベーションにもなるでしょう。しかし、こうした指標は臨床研究などで治療効果を判定するための「物差し」であり、個々の患者さんの治療目標と必ずしも一致するとは限りません。例えば、罹病期間が長い人、進行してしまった人、重度の糖尿病など関節リウマチ以外にも病気がある人、ご高齢の患者さんなど、臨床的寛解の基準値をクリアするために強い治療を行うことで、副作用の発症など何らかのリスクが生じる可能性がある場合は、完全に症状を消失させることではなく、症状があっても日常生活が不自由なく送れること(低疾患活動性)を目標に治療を進めていきます。患者さんの背景や病状によって目指すべきゴールが異なることを理解し、数値にこだわり過ぎないようにしましょう。

一方で、医師が病状をどう評価しているのか、患者さんも知っておくことが大切です。例えばDAS28では、28個の関節について痛みや腫れがあるかどうかなどをチェックします4,5)。ただし、28個の中に足の指の関節は含まれません(図1)4)。評価ポイントではない部位に痛みや腫れがある場合、そしてその部位を医師が診療しない場合は、積極的に患者さんから医師に伝えましょう。

図1 DAS28で評価される関節

DAS28で評価される関節

久保俊一. 知っておくべき!整形外科医の関節リウマチ診療ABC, 文光堂, 2016 より作成

症状の消失だけがゴールではない

治療によって自覚症状が改善されると、「目標が達成できた」と思うかもしれません。しかし、自覚症状はなくても関節の炎症は続き、病気が進行してしまう場合もあります。寛解の達成は症状の消失だけでは判断できず、さまざまな視点から評価する必要があることを理解していただきたいと思います。
臨床的寛解の達成は、マラソンでいえば「折り返し地点」です。症状が治まればそれでいいということでなく、病気の進行を完全に抑えて発症前の生活を全て取り戻すという大きな目標に向かって進んでいきましょう。
次回は、症状の消失という目的の先にある、関節や骨の破壊を防ぐことと日常生活を支障なく送ることの大切さについて、お話しします。

1)van Nies JA, et al.: Ann Rheum Dis. 2015; 74(5): 806

2)神崎初美 他. 最新知識と事例がいっぱい リウマチケア入門 -リウマチ治療はここまで変わった!, メディカ出版, 2017

3)日本リウマチ財団 リウマチ情報センター. T2Tとは
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/rm400_t2t.html(2022年10月アクセス)

4)久保俊一. 知っておくべき!整形外科医の関節リウマチ診療ABC, 文光堂, 2016

5)Prevoo ML, et al.: Arthritis Rheum. 1995; 38(1): 44

宮本 俊明 先生

宮本 俊明 先生

社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院
リウマチセンター長 膠原病リウマチ内科部長
1998年浜松医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。1999年、聖隷浜松病院に着任。2008年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本リウマチ財団登録医、日本リウマチ学会専門医・指導医。
(2022年10月現在)