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関節リウマチの治療目標について

2023/02/15?Knowledge

タイトル
関節リウマチの治療目標について
検証状況
Work In Progress
URL 名
RA-doctor3-1
概要
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内容
  • 関節リウマチの治療は過去20年で格段に進歩しています
  • 前向きに治療に取り組むには、自分なりの治療目標を持つことが大切です
  • 医師と目標を共有し、ゴールに向かって一緒に進んでいきましょう

関節リウマチの“治療目標”とは?

「関節リウマチ」という病名は知っていても、この病気の実態を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。私は関節リウマチの専門医として日々多くの患者さんと向き合っていますが、初めて病名をお伝えすると、患者さんから「私は将来、寝たきりになってしまうのですか?」とよく聞かれます。どんな病気なのかよくわからないからこそ、将来の見通しが立たずに不安になる、その気持ちはよくわかります。しかし、過去20年で関節リウマチ治療は格段に進歩し、治療効果も飛躍的に向上しました。私が医師になった1998年当時は、患者さんに対して「関節の痛みや腫れなど、今ある症状と相談しながら、何とかうまく病気と付き合っていきましょう」という、短期的な目標を提示することしかできませんでした。今では症状を和らげることはもちろん、「生涯にわたって、何不自由なく日常生活を送れるように頑張っていきましょう」と、長期的な目標を掲げることができるようになっています。

関節リウマチ治療の進歩を受けて、関節リウマチの治療目標を定めて行おうとする世界共通のガイドライン「目標達成に向けた治療(Treat to Target; T2T)」が提唱されました1)。T2Tでは、治療目標を「寛解とすべき」と述べています。寛解とは、病気の勢いが止まって症状がなくなり、進行が止まっている状態のことです。日本国内でも、T2Tに基づいて寛解を目指して治療を進めることが一般的になっています。

治療目標が、長い治療期間を支えてくれる

一方で、関節リウマチの原因はまだ解明されておらず、寛解を得られても「完治」、つまり病気自体が治ったわけではありません。治療を中止すると治まっていた症状が再び現れる可能性もあり、多くの場合、治療は長期間にわたり継続されます。「いつまで治療を続けなければいけないの?」「まだ痛みはあるけれど何とか生活できるから、これ以上の治療は必要ない」と思うかもしれません。しかし、明確な治療目標があれば先の見えない不安も和らいで、「もう少し頑張ろう」と前向きに治療に取り組めるのではないでしょうか。
また、目標を持たずに治療を始めると、治療に対して受け身になってしまうように思います。関節リウマチは医師に言われるまま漠然と薬を服用していればそれでよい、という病気ではなく、能動的な姿勢、すなわち治療に積極的に関わろうとする意識を持つことが重要です。「自分の治療目標を達成するためには、この治療が必要なんだ」という意識がなければ、薬を服用し忘れたり、中止してしまったりして「良くなるものも良くならない」ことにもなりかねません。

「治療をしてどうなりたいか」自分なりの目標を持つことが大切

「寛解を目指して頑張ろう」と言われてもピンとこないときは、「自分にとっての治療のゴールは、発症前の生活を全て取り戻すこと」と置き換えてみてください。例えば、関節痛のために趣味のサーフィンができなくなってしまったのなら、以前と同じようにサーフィンができるようになることが目標になるでしょう。治療をして何をしたいか、どうなりたいかをイメージできれば、前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。
ご自身の考える治療目標は、ぜひ主治医にも伝えてください。医師は関節の状態や、血液検査や画像検査の結果から病状を把握することはできても、患者さんの「思い、気持ち」まではわかりません。症状が治まり日常生活に支障がなくなれば、医師は「寛解を達成できた」と考えるかもしれません。ですが、「以前と同じようにサーフィンをする」という目標が達成できていなければ、その患者さんにとっては発症前の生活を全て取り戻せたとはいえないでしょう。
患者さんが100人いれば100通りのゴールがあります。ご自身の治療ゴールについて、まだ主治医と話し合ったことがなければ、機会を見つけて話してみてはいかがでしょうか。治療は医師だけが頑張るものでも、患者さんだけが頑張るものでもありません。ご自身の治療ゴールを主治医の先生としっかりと共有し、同じゴールに向かって医師と患者さんが一緒に突き進んでいくことが大切だと思います。

1)日本リウマチ財団 リウマチ情報センター. T2Tとは
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/rm400_t2t.html(2022年10月アクセス)

宮本 俊明 先生

宮本 俊明 先生

社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院
リウマチセンター長 膠原病リウマチ内科部長
1998年浜松医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。1999年、聖隷浜松病院に着任。2008年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本リウマチ財団登録医、日本リウマチ学会専門医・指導医。
(2022年10月現在)