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リウマチの医療費はどれくらいかかる? どんな支援制度やサービスがあるの?

2023/02/15?Knowledge

タイトル
リウマチの医療費はどれくらいかかる? どんな支援制度やサービスがあるの?
検証状況
Work In Progress
URL 名
RA-SME1-1
概要
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内容
  • 「医療費控除」などの支援制度やサービスを利用することで医療費の負担は軽減できる

支援制度やサービスを利用することで医療費の負担は軽減できる

生物学的製剤1)は、関節リウマチの炎症や腫れ、痛みなどの症状を抑える薬で、長期間にわたり治療を継続する必要があります。

生物学的製剤の薬剤料の自己負担額は高額になることがあるため、治療費の負担を重いと感じる患者さんも多いですが、たとえば国や自治体は患者さんの医療費を軽減する公的支援制度を整えています。ここでは、患者さんの関節リウマチ治療にかかる医療費負担を軽減するための支援制度やサービスを中心にご紹介します(図)。

1)生物学的製剤

バイオテクノロジー技術(遺伝子工学的な手法)によりヒトやマウスなどの細胞に産生させたタンパク質を利用して作られる薬剤のことです。

関節リウマチ治療開始時、治療中における支援制度・サービス

治療開始

1 医療費控除

確定申告の時期(2月中旬~3月中旬)に税務署に確定申告書を提出することで、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超えるときは所得控除を受けることができます。診療費や薬剤費だけでなく、通院のための交通費なども含めて控除の対象とすることができます。申告を忘れてしまっても、過去5年以内であれば、さかのぼって申告することができます。なお、申告時に病院・医院で受け取った領収書・レシートの提出は不要ですが、5年間保管しておかなければなりません(税務署から求められたときは提出・提示しなければならない)ので、必ず領収書・レシートを受け取り、保管しておきましょう。

●対象となる医療費

  • 診療費・治療費(医科・歯科)
  • 入院費
  • 通院時の公共交通機関を使用した場合の交通費(タクシー代(公共交通機関が利用できない場合は除く)や自家用車のガソリン代・駐車場代は除く)
  • 入院時の食事代の自己負担分(病院で出された食事のみ)
  • 薬剤費(病気の予防や健康増進目的の薬剤(サプリメントなど)は除く)
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費(疲れを癒すなど治療に直接関係のないものは除く)
  • 医療用器具(コルセット等)の購入費・レンタル費

など

医療費控除の金額は、次の計算式より算出される金額(最高200万円)です。

(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額*)-10万円**

*生命保険契約などで支給される入院給付金や、健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など

**総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の額

医療費控除選択のイメージ

また2017年から新しく「セルフメディケ―ション税制」という医療費控除の特例制度が創設されました。これは、一定の健康管理や疾病予防への取り組みを行う個人がスイッチOTC医薬品を購入した際に、実際に支払った額から1万2000円を差し引いた額の所得控除を受けることができるものです。ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできませんので注意が必要です。

問合せ先
・お住まいの地域の税務署
・国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/

2 高額療養費制度

医療費の負担を軽減する国の公的支援制度の一つに「高額療養費制度」があります。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額(入院時の食事代の自己負担分や差額ベッド代等は含みません)が、1ヵ月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。上限額は、年齢(70歳以上、69歳以下の2区分)や所得によって異なります。

たとえば患者さんの年齢が40代で年収約370万円~約770万円の場合では、自己負担は区分ウに該当しますが、薬剤料(生物学的製剤)だけでは1ヵ月の自己負担額(3割負担)が約3万6500円~約7万3000円(薬剤料は用量により異なります)のため、高額療養費制度の対象となりません。ただし同月に検査や他の治療がある場合は、その分の医療費が加算され、支払い合計額が計算式の自己負担限度額を超えると、高額療養費制度の対象となります。

高額療養費制度(69歳以下の方の上限額)

厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf)(2022年9月アクセス)

高額療養費制度には「多数回該当」「世帯合算」という仕組みがあります

直近1年以内に、高額療養費給付に該当する回数月が3回以上ある場合、4回目以降は、自己負担額がさらに引き下げられます。これを「多数回該当」と呼びます。

また、69歳以下の方で、同一世帯で同じ医療保険に加入している方のうち同月内に支払った自己負担額が2万1000円以上になった被保険者や被扶養者が2人以上いる場合は、自己負担額を合算した金額が一定の額を超えた場合も払い戻されます(70歳以上は2万1000円に満たなくても自己負担額を合算できます)。これを「世帯合算」と呼びます。ただし、住民票上の同一世帯であっても、医療保険が別である場合には、自己負担額は合算されません。

相談・問合せ先
・ご加入の公的医療保険(保険者)の窓口
高額療養費についてのお問い合わせ先は、どの医療保険制度に加入しているかで変わります。お持ちの被保険者証で、保険者の名前をご確認ください。「〇〇健康保険組合」など、保険者名が記載されています。自身が加入している保険者に問い合わせましょう
・病院の医療相談室など

3 付加給付

「付加給付」とは、福利厚生の一環として、健康保険組合が加入者に対して法律で定められた法定給付以外に負担する独自の給付のことです。付加給付の有無は、保険者によって異なりますが、健康保険組合によっては、高額療養費よりも低い自己負担上限額を独自に設定して一部負担還元金(家族療養費付加金)として独自に設定しているところもあります。付加給付の有無はそれぞれの保険者である健保組合に確認してみましょう。

相談・問合せ先
・ご加入の公的医療保険(保険者)の窓口
付加給付については、お持ちの被保険者証で、保険者の名前をご確認ください。「〇〇健康保険組合」など、加入中の保険者名が記載されていますので、保険者に確認してみましょう

休業

4 傷病手当金

関節リウマチの病状が進行して、働けなくなり、会社を休業したときは、所得補償として、健康保険法で規定されている「傷病手当金」を活用しましょう。 傷病手当金の要件は、①業務外の事由による療養のため、②労務不能で報酬が受けられないとき、③連続して3日間以上休んでいるときに、4日目の休みから1年6ヵ月間、1日につき、給与の約3分の2が健康保険組合などから支給されます。全国健康保険協会管掌健康保険の「現金給付受給者状況調査報告」(平成29年度)によると、傷病手当金の平均支給期間は162.77日(約5ヵ月半)です。なお、自営業などで国民健康保険に加入中の場合、傷病手当金が支給される制度はありません。申請の手続きは、申請書に、医師の診断と事業主から事業所の出勤状況を記載してもらい、加入中の健康保険に郵送します。おおよそ1ヵ月後に患者さんの指定口座に振り込まれます。

傷病手当金については全国健康保険協会ホームページ(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/)の情報も参考になります。

相談・問合せ先
・ご加入の公的医療保険(保険者)の窓口
お持ちの「被保険者証」に記載されている「保険者」にお問合せください

機能障害の出現

5 介護保険制度

「介護保険制度」は、介護が必要になった高齢者を支える制度です。65歳以上(第1号被保険者)の場合、介護を必要とする原因は問われませんが、40~64歳(第2号被保険者)の場合、「特定疾病(16種類)」の患者さんのみ介護が必要になったときに、介護保険が利用できます。関節リウマチは特定疾病の指定を受けています。

相談・問合せ先
・市区町村の介護保険担当窓口
・地域包括支援センター
・居宅介護支援事業所

障害者福祉制度

6 身体障害者手帳

「身体障害者手帳」とは身体障害者が各種の福祉サービスを受けるために必要な手帳です。交付を希望する方は、医師の診断書・意見書を添えて、居住地の都道府県知事、指定都市市長または中核市市長に申請します。手帳の等級は1級~6級です。手帳のしおりには、受けられる障害福祉サービス等が記載されています。有料道路、鉄道運賃の割引や税金の減免・控除のほかに、医療費の助成もあります。

相談・問合せ先
・市区町村の障害福祉担当窓口

7 障害者総合支援法のサービス

「障害者総合支援法」は、障害者自立支援法に代わってつくられた法律(2013年4月施行)です。障害者や難病の患者さんの日常生活や社会生活の総合的支援が目的です。関節リウマチも対象になり、ホームヘルパーによる入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事援助や自立訓練などが受けられます。

相談・問合せ先
・市区町村の障害福祉担当窓口
・病院の医療ソーシャルワーカー

8 重度心身障害者医療費助成制度

「重度心身障害者医療費助成制度」は、都道府県や市区町村が実施しているもので、医療費の助成を行う制度です。お住まいの都道府県、市区町村によって、対象となる障害の程度や、助成の内容も異なっていますが、対象者は国民年金の障害等級1級、身体障害者手帳1~3級をお持ちの方などで、助成内容は医療費の自己負担分を全額助成する地方公共団体が、多いようです。

相談・問合せ先
・市区町村の障害福祉担当窓口

9 障害年金

「障害年金」は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる公的な年金制度の一つです。障害年金は、初めて医師にかかった日(初診日)から1年6ヵ月後の障害認定日に「障害認定基準」で定めた障害状態にあるときに、請求します。年金保険料の支払いなど、一定の条件をクリアすれば、支給されます。そこで例えば、④で紹介した傷病手当金の支給期間は1年6ヵ月ですので、1年6ヵ月を経過しても治癒しない場合など、それ以後は障害年金を請求する方法もあります。関節リウマチ患者さんの中には、障害年金の支給を受けていらっしゃる方もいます。ちなみに、初診日に国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金が支給され、厚生年金に加入していた場合で、障害等級1級、2級に該当する場合は障害厚生年金も併せて支給されます。

相談・問合せ先
・全国の年金事務所、街角の年金相談センター

特定医療費助成制度

10 指定難病

2014年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立し、2015年1月から指定難病を対象とした特定医療費助成制度(難病医療費助成制度)が開始されました。2021年11月現在、338疾病が指定難病として医療費助成の対象になっています。「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして、病状の程度が一定程度以上の場合、医療費助成(特定医療費)の対象になります。特定医療費の内容は、所得に応じて自己負担上限額が定められています。例えば、年収約160万円~370万円の場合(一般所得Ⅰ)は、月額の自己負担上限額は1万円(外来+入院)です(図)。悪性関節リウマチは指定難病の対象疾患となっています。

指定難病に関しては難病情報センターのホームページ(http://www.nanbyou.or.jp/)からも情報を得ることができます。

難病情報センターホームページ:指定難病患者への医療費助成制度のご案内
http://www.nanbyou.or.jp/entry/5460)(2022年10月アクセス)

相談・問合せ先
・都道府県・政令市の相談窓口(保健所、保健センター等)

黒田 尚子 先生

黒田 尚子 先生

ファイナンシャル・プランナー(FP)
98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。
黒田尚子FPオフィス公式HP(www.naoko-kuroda.com/
(2022年10月現在)